サン・クレメンテ教会 2


 

さて、お待たせいたしました(?)、いよいよ主祭壇の後ろ側の後陣のモザイクを見ていくことにしましょう。

一面に張り巡らされた葡萄の枝とその間の動物たち、4本の川、天井中央の「神の手」、キリストが磔にされている中央の十字架、その下には光背のある羊を中心とした合計12匹の羊たち。
外側のアーチには、最上部に本を持ったキリスト、4人の福音書記者の象徴、4人の聖人と2人の預言者が描かれています。

   

 

半円球のドーム部分の拡大写真です。ドーム全体は「エデンの園」を象徴しています。

渦巻状の葡萄の枝葉は「生命の木」をあらわしています。これは「私は葡萄の木、あなたがたはその枝である。」というヨハネによる福音書に基づくもので、教会の信徒の集まりを象徴しています。枝葉の間には、聖アウグスティヌス、聖ヒエロニムス、聖グレゴリウス、聖アンブロシウスなどのラテン教会の教父や動物たちが描かれています。
十字架の下からはピション、ギボン、チグリス、ユーフラテスの4つの川が流れ出て世界を潤しています。
天井中央から十字架に向かって「神の手」が描かれています。神そのものを具象化することは畏れ多いとしてその手だけを描いたのです。

モザイク全体のモチーフは4世紀から5世紀にかけての初期キリスト教の伝統的なもので、おそらく4世紀の最初の教会の後陣を飾っていたものの複製だと思われますが、中央部の十字架上のキリストは、明らかに12世紀の新しいモチーフです。

   

 

「エデンの園」のモザイクの下の部分には、エルサレムの町の門から出てきた6匹の子羊と、ベトレヘムの町から出てきた6匹の子羊が、中央の光背のある羊を囲んでいます。これは言うまでもなく「神の子羊=救い主キリスト」と12使徒をあらわしています。

葡萄の枝葉の間に水を飲む鹿や孔雀、人々の姿などが色鮮やかに描かれているのがご覧になれるでしょうか。

 

 

ドームの外側の凱旋門の拡大図です。

ここではちょうど切れてしまっていますが、中央には片手に聖書を持ち、もう片手を祝福のために挙げているキリスト像があります(ドーム部分の拡大図参照)。キリストの両脇には聖マルコ(ライオン)、聖マタイ(人間のような顔)、聖ヨハネ(鷲)、聖ルカ(牡牛)の4人の福音書記者たち(ここでは聖マタイと聖ヨハネが写っていません)、左側には預言者イザヤの上に聖パウロと聖ラウレンティウス、右側には預言者エミリアの上に聖ペテロと聖クレメンテが描かれています。

   

羊たちの下には、キリストと聖母、12使徒を描いた12世紀のフレスコ画があります。
豪華絢爛なモザイクの印象があまりに強いために影が薄くなりがちですが、このフレスコ画もすばらしいものなので、忘れないで見てください。
   

「サン・クレメンテ教会 3」

   

「サン・クレメンテ教会 1」

   

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