サン・クレメンテ教会 1


コロッセオから南東にサン・ジョヴァンニ・イン・ラテラーノ大聖堂方面へと向かう途中にサン・クレメンテ教会があります。

ファサードは18世紀にカルロ・マデルノによってバロック風に改築されていて新しい印象ですが、よく見ると12世紀の円柱が使われていますし、前庭を持つ建築様式は4世紀の創建当時のままです。
このことからもわかるように、この教会の下には2つの時代の異なる建物が積み重なっているのです。

ここは1世紀はじめ頃のフラヴィア・クレメンテという一族の所有していた館の跡で、地下2階までおりるとその遺構を目にすることができます。
その上の地下1階には、聖ペテロと聖パウロの直弟子であったと言われている4代教皇聖クレメンテに捧げるために4世紀後半に建築された最初の教会の遺構があります。

   

4世紀創建の最初の教会は、1084年にノルマン人によるローマの略奪の時に破壊されてしまいました。そしてその旧教会の上に1108年に現在見られる新教会が建てられたのです。

天井と壁のフレスコ画は18世紀にバロック風に改修されましたが、全体は地下1階にある4世紀の教会と同じ形の三廊式のバジリカ様式になっています。

   

身廊中央部には、美しい色大理石のコスマーティ模様で装飾された聖歌隊席(スコラ・カントゥールム)があります。両脇には聖書朗読台もあります。(このような形式の内陣は、サンタ・サビーナ聖堂やサンタ・マリア・イン・コスメディン教会にも見られます。)
もとは地下の旧教会に6世紀に作られた聖歌隊席を、石材はそのままで新教会建立時に作り直したものです。

写真では側廊との境の円柱と重なっていて少々見にくいかもしれませんが、やはりコスマーティ模様のねじれた復活祭用の巨大な燭台があります。サン・ジョヴァンニ・イン・ラテラーノ大聖堂やサン・パウロ・フォリ・レ・ムーラ大聖堂のロマネスク時代のキオストロ(中庭)の列柱と同じようなつくりです。

   

さて、上の2枚の写真をご覧になってわかるように、12世紀の教会の一番の見どころは、堂内に入ったとたんに目に飛び込んでくる、美しく光り輝く後陣のモザイクであることは言うまでもありません。

しかし、後陣のモザイクはちょっと後回しにして、まず左側の側廊奥にある聖カタリーナ礼拝堂を見学しましょう。

ここは15世紀初頭のブレンダ・ディ・カスティリオーネが発注した礼拝堂で、フィレンツェの初期ルネサンス画家マゾリーノ・ダ・パニカーレ、あるいはマザッチョによる「アレキサンドリアの聖カタリーナの生涯」と「十字架刑」のフレスコ画があります。

   
1950年代に修復されてきれいになった「十字架刑」のフレスコ画。

これらはローマにおける最初のルネサンス絵画とされています。

   

「サン・クレメンテ教会 2」

   

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