ヴァチカン美術館 4


 

システィナ礼拝堂は言うまでもなくヴァチカン美術館最高、いや世界最高の見どころの一つでしょう。
このさして大きくない礼拝堂のあらゆる壁があまりにも有名なミケランジェロの「天地創造」、「最後の審判」、ピントリッキオ、ペルジーノ、ボッティチェルリ、ギルランダイオらによる、「モーセ伝」、「キリスト伝」などの絵によって彩られています。

ところがここだけは写真撮影禁止なのです。(フラッシュなしでもダメです。)そこで、管理人の趣旨としては掟破りなのですが、写真集から最も好きな作品をスキャンして参りました。

上の絵は側面を飾る「イエス伝」の連作の一つ。ペルジーノ作「鍵を手渡すキリスト」。イエス・キリストが天国の鍵を後継者であるペトロに手渡しているところを描いたものです。非常に均整の取れた画面構成で、見る者の目を釘付けにするフレスコ画です。
背景には当時の遊びの様子や聖堂、凱旋門などが描かれていて、前方のイエスたちの群像と全く関係のない情景が広がっているのが、またちょっと不思議な雰囲気を出していると思うのですが皆様はいかがお感じでしょうか?

ミケランジェロの絵も嫌いではないのですが、これでもかという肉体の誇示にちょっと辟易します。しかし彼の絵がなければ、この礼拝堂がこれほど傑出したものにならなかったことも事実です。

システィナ礼拝堂ではみな、天井と正面のミケランジェロの絵ばかりを眺めているようですが、側面の作品たちも是非お忘れなくご鑑賞ください。

   

システィナ礼拝堂を出るとほとんどの観光客は「終わった」と感じるようです。足早になって通り過ぎてゆきます。

左はヴァチカン図書館に属する部分にあるリゴーリオの通路です。指輪などの宝石やカップなどが飾ってありますが、じっくり見ている人は少ないようです。


下の写真は同じく図書館のシクトゥスの大広間。
シクトゥス5世がドメニコ・フォンターナに命じて1589年に作らせた広間です。ここは2廊式の広間で壁面、柱一本一本まで壁画で覆われていますが、残念なことに立ち入りは禁止されていて、通路からのぞくことしかできません。

   

ヴァチカン美術館見学の最後の見どころは絵画館(ピナコテカ)です。ここには中世からルネサンスにかけての巨匠たちの作品が揃っています。

その中でおそらく最も人気があるのが、ラファエロの「キリストの変容」でしょう(写真左中央)。
キリストが弟子たちの前で神へと変容する様を描いたダイナミックな絵画です。ラファエロの急死後ジュリオ・ロマーノらによって完成されたそうです。

両側に同じくラファエロの「フォリニョの聖母」と「聖母戴冠」が展示されています。

   
レオナルド・ダ・ヴィンチの作品もあります。
「聖ヒエロニムス」。荒野で苦行を続けるヒエロニムスの苦悶の表情が生々しい作品です。
やせ衰えた肉体の描写もダ・ヴィンチらしく極めてリアルです。残念ながら未完成の作品。

 

   

メロッツォ・ダ・フォルリの「音楽を奏でる天使」。1480年頃のフレスコ画の断片で、もとはサンティ・アポストリ聖堂のアプス(後陣)にありました。透き通るようなブルーの空を背景にした天使の表情や金色の巻き毛がとてもきれいです。
10年以上前に、これが目玉になった「ヴァチカン展」を国立西洋美術館だったかでやっていましたが、管理人は見に行かなかったことは覚えています。
   
はなはだ未熟ですが、この項でヴァチカン美術館の紹介は終わりにしようと思います。とにかく見どころがありすぎて、手に負えないと言うのが正直な感想です。
ここはウフィッツィ美術館などと比べても極めて広く、またそのコレクションも気が遠くなるほどあります。「いくらでも見てやろう。」と意気込んで入っても、こちらの意気込み以上にいくらでも見どころがあり、結局最後の方は頭が霞んでただ歩くだけになりがちです。ですから、もし本気でヴァチカン美術館を見ようという方は、数日かけてこまめに見に行かれるのも良いでしょう。

それから、これは面倒くさいと敬遠する方もいるでしょうが、館内の売店で様々なガイドブックを売っていますので、是非分厚いものを体力の許す限り購入することをお勧めします。
この美術館はどんなに頑張っても結局非常に多くの見どころを見逃す場所です。これは仕方がありません。でも、ガイドブックを買っておけば、それを後からカバーできるし、何となく印象に残ったところの由来などを偶然に知ることができるかもしれないからです。

   

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