Le Fontane(噴水) 2


   

噴水にはギリシャ・ローマ神話の神々やイルカなどの海の生き物がモチーフとして好まれます。今でこそイルカというとかわいいイメージですが、バロック時代のものは歯をむき出しにしたりしてちょっと怖い表情。怪人の口から水が吹き出るパターンもよく見られます。

写真左はパンテオン前のロトンダ広場のユーモラスな噴水、右はにぎやかなコルソ通り沿いのコロンナ広場の噴水です。

   

 

サンタ・マリア・イン・トラステヴェレ教会前の同名の広場にある噴水。1692年にカルロ・フォンターナが設計しました。

 

いつも多くの観光客でごったがえすスペイン広場のバルカッチャの噴水(Fontana della Barcaccia)。設計は有名なベルニーニかその父のピエトロと言われています。

テヴェレ川でワインの運搬に使われていた、浸水で沈みかかった老いぼれ舟が浅い水たまりに浮かんでいる、というモチーフです。 泉の水はトレビの泉と同じ由緒あるアクア・ヴェルジネ(処女の泉)ですが、このあたりは水圧が低いために、勢いよく噴水を吹き上げさせることができなかったのを、ベルニーニがこのような工夫を凝らして設計しました。

   

バルベリーニ広場から北に向かってS字を描いて延びるヴェネト通りの入り口にある蜂の噴水(Fontana delle Api)。1644年にベルニーニの設計で、バルベリーニ家出身の教皇ウルバヌス8世に捧げられました。噴水の水をすすっている3匹の蜂はバルベリーニ家の紋章です。「この水は民衆と家畜のためのものだ」と銘には記されているそうです。
   

16世紀末の教皇シクトゥス5世によるローマの都市計画により、スペイン階段上のトリニタ・ディ・モンティ聖堂とサンタ・マリア・マッジョーレ大聖堂を結ぶ直線道路が造られました。その幹線道路と現在のヴェンティ・セッテンブレ通りとクィリナーレ通りとの交差点は、交通の要所となり、その4隅に4つの噴水(Le Quattro Fontane)が造られました(上段及び下段の写真)。4つのうち2つの女性像はジュノーとディアナを、男性像はナイル川とテヴェレ川を表していると言われています。

この交差点は現在でも交通量が多いため、ゆっくり噴水を観察するのもままなりません。しかしボッロミーニの傑作サン・カルロ・アッレ・クァットロ・フォンターネ教会があるので、バロック好きの方には是非おすすめのスポットの一つです。

   
ローマの歴代の為政者たちはいわゆるローマ街道とともに水道の整備を進め、それらは網の目のように広大な帝国内に張り巡らされていました。つまりローマ街道と水道は、ローマの文明社会を根底から支えていた、いわば古代ローマ文明の象徴であるともいえましょう。

帝国崩壊後、ローマの街道も水道も蛮族によって破壊されてしまい、長い暗黒時代に入りました。しかし、ルネサンスを経てバロックの時代を迎えると、教皇たちによりローマの街は都市計画の下に再び整備され、古代の水道も復活されました。そして劇場都市ローマを演出する手段の一つとして、あちこちに造られたのが噴水です。

小さな広場の片隅に何気なく置かれている噴水一つをとっても、長いローマの歴史を背景に背負っているのだと思うと感無量です。これ以外にもすてきな噴水を見つけることも今後のローマ散策の楽しみの一つです。

   

「Le Fontane(噴水)・1」