サンタ・サビーナ聖堂


アヴェンティーノの丘の上、閑静な高級住宅街にひっそりと建つサンタ・サビーナ聖堂は、5世紀の前半に司教ペテロにより創建されました。
何度かの改修を経て、1587年にはドメニコ・フォンターナによってバロック風の内部装飾がなされましたが、このバジリカ式初期キリスト教教会の外装には不釣り合いでした。
結局20世紀初頭に創建当時の簡素な建物に修復され、今に至っています。
   
三廊式の内部には白大理石のコリント式列柱が並び、高窓から差し込む光があふれていて、素朴な美しさが印象的です。
これで列柱の上にモザイク画があれば、同時代に造られたラヴェンナのサン・タポッリナーレ・ヌォヴォ聖堂とそっくりです。

確かにこの作りにバロック風の装飾は似合わなかっただろうなぁ、と痛感します。

この聖堂の閑静な環境に囲まれた荘厳かつ明るい雰囲気が好まれるのか、結婚式場としてもなかなかの人気のようで、教会正面には結婚式のパンフレットがたくさんありました。

 

円柱の支えるアーケードは大理石のフリーズで飾られています。

中央入り口の上には、青地に金で教会の建築の経緯を記した文字が見られますが、これは5世紀の創建当時のものです。(写真中央右、明るい窓の下部)

   

この杉でできた中央入り口の扉も創建当時のもの。もともとは28枚のパネルに旧約・新約聖書の物語を表していましたが、現在はそのうちの18枚が残っています。

1836年の修復の時に、興味深い(少しばかり不敬な)エピソードが残っています。
有名な旧約聖書のモーゼが紅海を渡る場面で、修復師が溺れかけているエジプトのファラオの顔をナポレオンに似せてしまったというのです。
これは、その没後すでに15年も経っていたというのに、まだナポレオンに対する激しい憎しみの情が人々の間にあったということの証だそうです。

 

教会の後陣の裏手にはオレンジの木が生えるサヴェッロ公園があります。

煉瓦造りの素朴な外壁に映えるオレンジの木。初期キリスト教時代の建築にすっかり魅了され、1500年の時間が一気に戻るような錯覚を憶える管理人でした。

   

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