サン・ルイージ・デイ・フランチェージ教会


この教会は、カトリーヌ・ド・メディチの尽力により、1518年に創建され、1589年にジャーコモ・デッラ・ポルタのデザインでドメニコ・フォンターナによって完成されました。
フランスの守護聖人サン・ルイ(第7回十字軍を指揮したルイ9世)を祀るローマに住むフランス人の国民教会です。(写真提供:稲穂さん)
 

内部は三廊式で左右に5つの礼拝堂を配しています。
ここには多数のフランスの有名人たちが埋葬されています。
   

しかし、なんといってもこの教会を有名にしているのは、左側廊5番目のコンタレッリ礼拝堂のカラヴァッジョの初期の3部作です。
これは「聖マタイの召し出し」(1600年)です。研究者の間でもどれが聖マタイなのか、絵の解釈が分かれているようですが、左端のうつむいて銭を数えている若い徴税人がそれだというのが一般的です。
ここで呼びかけられている聖マタイは、後に「マタイによる福音書」を書いた十二使徒の一人です。
   

「聖マタイの殉教」(1600年)。上の「聖マタイの召し出し」と対面する壁に配置されています。
マタイはキリスト昇天後、エチオピアやペルシャでキリスト教の伝道を行いますが、ドミティアヌス帝統治下で石責め、火刑の後、斬首されたと言われています。
この絵でマタイを迫害している刺客の横にいるヒゲ面の男は、カラヴァッジョの自画像だとされています。
   

コンタレッリ礼拝堂の中央祭壇画として描かれた「聖マタイと天使」(1602年)。聖マタイが出現した天使によってスコラ哲学を教えられる場面です。マタイの驚愕する表情、天使の渦巻くような衣服が暗い中に浮かび上がります。
この絵は、同じ主題で当初納品する予定だった第1ヴァージョンの絵が注文主から気に入られなかったため、描き直された第2ヴァージョンです。第1ヴァージョンはベルリンのプロイセン王室のコレクションとなっていましたが、第2次世界大戦中の空襲により、惜しくも焼失してしまいました。
   
どの作品も、光と影による強い明暗の対比、劇的な画面構成と色彩、人々の表情から衣装の細部に至るまでのリアルな表現、というカラヴァッジョの特徴を余すところなく示した大作です。
この3部作を見るために、是非とも訪れたい教会です。その際には、時間制限つきの照明を点灯させるための小銭を忘れずに。
   
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