ジェズ教会


16世紀にマルティン・ルターから始まったプロテスタントの宗教改革は、それまで一枚岩だった西方キリスト教社会に大きな衝撃を与えました。16世紀半ばにはカトリックとプロテスタントの対話のためのトレントの公会議が開かれましたが、結局両者の和解は得られませんでした。
その結果、これ以降カトリック側は自らの手での教会内部の改革と世界的な規模での布教に乗り出します。

そしてその「反宗教改革運動」の旗手ともなったのがスペイン人聖イグナティウス・ロヨラによって創設されたイエズス会です。
ジェズ教会は、イエズス会の母教会として、枢機卿アレッサンドロ・ファルネーゼの資金援助により1568年から75年にかけて建設されました。

   

内部は両脇に説教壇がある単廊式のラテン十字形となっています。これは大勢の信者が説教をよく聴き取れるよう、そしてミサへの参加意識を高めるという効果があります。
翼廊の中央部の天井にはクーポラを配し、主祭壇には明るい光が注いでいます。

ドームの壁画には「プロテスタントや異教徒は地獄の業火に焼かれても、カトリック教徒は天国に導かれる」という自信にあふれた内容が描かれています。

   

本堂右側の祭壇には、1549年に日本にキリスト教を伝えた聖フランシスコ・ザビエルのミイラ化した右手が納められています。
この右手のミイラは、ザビエル来日400年の1949年と来日450年の1999年には再来日?しています。

   
15世紀の「ストラーダ(道)の聖母」と呼ばれるこの聖母子像は、近所にあった同名の教会の正面を飾っていた絵画です。

 

ここは教会左側にあるイエズス会の創設者・聖イグナティウス・ロヨラの礼拝堂です。聖人の遺骸の上の祭壇には、アンドレア・ポッツォにより作られた金箔の聖イグナティウスの像が燦然と輝いています。

この教会内部の装飾は、壁画も彫像もローマ・カトリックの勝利の賛歌というテーマで統一されています。ここを拠点に多くのイエズス会士たちが遠くアジアや新大陸へと海山越えて宣教へと旅だったのですが、その根底には「ローマ・カトリックこそが正統」という力強い自信があってこそだったのだろう、ということをつくづく感じました。

苦手なバロック芸術ももここまで豪華絢爛キンキラキンとなると、もはや天晴れとしか言えません。
でもやっぱり自分は地獄の業火に焼かれてしまうのか、とちょっぴり心配になる異教徒の管理人でした。

   

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